ファッションのプロ直伝!
悩みをカバーする春のおしゃれテクニック

ファッション

春はおでかけにぴったりの季節。自分らしい服や小物を身にまとって出かければ、気分も上がってワクワクしてくるものです。とはいえ、重症筋無力症患者さんの中には、着脱のしづらさや疲れやすさが影響して、自分好みのアイテムを選べない葛藤を抱えている方もいるかもしれません。
そこで今回は、パーソナルスタイリストの伊野佳代子さんにお話を伺い、重症筋無力症の女性が抱える悩みをカバーしながら、無理せず楽しめるファッションのコツを教えていただきました。

重症筋無力症を抱える女性のファッションの悩みとは?

重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)では、筋力の低下によってさまざまな症状を引き起こします1)2)。このような症状が招く悩みとしては、体に力が入りにくく着脱が困難になったり、疲れやすいことによって重たいカバンや高いヒールの靴を身につけるのが辛くなったりすることが挙げられます。また、物が二重に見える(複視)などの眼の症状から、ボタンやアクセサリーを留めるといった細かい作業が難しくなることもあります。

このような悩みが原因で、着たい服や使いたいアイテムが選べず、ファッションに消極的になっている方もいるかもしれません。とはいえ、自分らしいおしゃれを楽しみたいですよね。

パーソナルスタイリストの伊野佳代子さんがおすすめする、この春手軽に取り入れられるファッションのコツやポイントを見ていきましょう。

着脱が楽なおしゃれアイテムを取り入れる

▲コーディネートの一例

ストレッチ性のあるリブ素材のカットソーに、ゆったりとしたドルマンスリーブのカーディガンを重ね、ボトムスはウエストゴムのワイドパンツを合わせました。軽量リュックやローファーを使って負担の少ないスタイルながらも、光沢素材やアクセサリーを効かせてキレイめにまとめたカジュアルスタイルです。

前開き・ドルマンスリーブのトップス

サッと羽織ることができるカーディガンやシャツ、ジャケットといった前開きのアイテムは重宝するでしょう。特に、腕周りや袖口がゆったりとしたドルマンスリーブは着脱しやすくおすすめです。ジャケットの場合は、伸縮性のある素材や、カーディガン感覚で着ることができる裏地がない軽いものを選ぶと楽に着られます。

▲羽織りを白のファスナー付きカーディガンにし、鞄やアクセサリーを変えるだけでも、印象がガラリ。少ないアイテムでもいろいろな着回しが楽しめます。

ボタンやファスナーを留めるのが大変だからと避けてしまう方もいるかもしれません。しかし、前を開けたまま羽織れば、トレンドの抜け感やこなれ感を演出することができます。
ファスナーを閉めて着たい時は、持ち手がリングタイプのアイテムを選ぶと、力が入りにくい時でも比較的楽に上げ下げすることができます。

ゆったりとしたワンピース

リラックスシルエットのゆったりとしたワンピースは、着脱しやすく、1枚でコーディネートが完成するので楽なアイテムです。
特に2024年の春夏は、リゾート感のあるファッションがトレンドとして注目されているため、リゾートワンピースも多く発売されます。ぜひお気に入りのアイテムを探してみてください。

ウエストゴムのワイドパンツ

ウエストゴムでゆったりとしたシルエットのパンツも、楽に履けるアイテムです。「ラフに見えすぎるのでは?」と心配になるかもしれませんが、シルクやポリエステルなど、ツヤ感のある素材を選べば、部屋着っぽくならずオフィスでも着ることができます。シルク素材は肌あたりも良いため、ステロイド剤の副作用などで肌が敏感になっている時にもおすすめです。

軽くてつけやすいアクセサリーをポイントに

選べる服に制限があることも多いので、アクセサリーでおしゃれに変化をつけてみるのも楽しいでしょう。

頭からかぶるだけのロングネックレスや、ワンタッチでつけられるイヤリング、マグネット式の留め具のブレスレット、留め具の無いバングルなど、簡単につけられるアクセサリーはたくさんあります。
また、軽さも重要です。コットンパールや、中が空洞になっているビーズのアイテムを選べば、軽いながらも見た目ではしっかりと存在感を出すことができます。パールアイテムはパーティシーンや冠婚葬祭でも活躍します。
アクセサリーを購入する際は、無理なく使えそうか、一度試着して重さや付け方をチェックすると安心です。

素材を選べば、細身のシルエットも楽しみやすい

着脱のしやすさからゆったりしたシルエットのアイテムが多くなりますが、ストレッチ性の高い素材なら、少しタイトなシルエットでも比較的楽に着られます。コットンニット、リブ素材、ジャージー素材、リネンニットなどの素材をチェックしてみてください。

軽くて持ち運びが楽なカバンを選ぶ

リュックは軽くシーンを選ばないのでおすすめ

リュックは、サッと背負えて両手が空くので重宝するアイテムです。中でも、ナイロンやポリエステルなどの素材は、軽量でありながら光沢感もあるため子供っぽくならずに使えます。より高級感やきれいめな印象を与えたいなら、エコレザー(合皮)の素材も軽くて負担が少ないでしょう。

リュックでは荷物を取り出す時の上げ下ろしが辛いという場合は、ミニポシェットを斜め掛けすると、スマホや小銭など、すぐに必要なものを取り出すのが楽になります。

ちょっとしたお出かけにはミニポシェットだけでも良いですし、リュックやトートバッグと2個持ちしても、アクセサリーのような印象でおしゃれに見えます。

シーン別リュックコーデのポイント

ビジネスシーン

先にご紹介したような、光沢のある素材・エコレザーであれば、リュックをビジネスシーンに使用しても浮きづらくなります。色は、黒などのベーシックカラーはもちろん、ベージュやピンクベージュなども大人らしい落ち着きが出ておすすめです。「暗い色のジャケットに明るい色のリュックは浮きそう」と思うかもしれませんが、あえて明るい色を足すことでおしゃれな印象を与えられます。

カジュアルシーン

ビジネスシーンでも使用するリュックをカジュアル使いする場合は、スカーフを結ぶと、一気に華やかで軽やかな印象に。2024年春夏は、昨年に引き続きスポーティーアイテムがトレンドなので、甘いワンピーススタイルや、きちんと感のあるジャケットスタイルの外しとしても使えます。

負担が少なく歩きやすい靴を履く

ヒールの無いフラットなパンプスは、リラックスムードを漂わせ抜け感を演出できるため、今季のトレンドとしても注目されています。
キラキラと光るメタリックな装飾や素材のものを選べば、パーティーシーンにも使うことができます。

ローファー

トラッド感あるローファーもおすすめです。最近のアイテムは靴底に程よい厚みのあるものが多いため歩きやすく、トレンド感もあります。少しマニッシュな休日スタイルからビジネスシーンまで幅広く活躍するアイテムです。

スニーカー

歩きやすく、疲れにくい靴といえばスニーカーです。ビジネススタイルに合わせる時は、ゴツさがなくデザインもシンプルなものを選びましょう。レザー素材ならツヤ感もあり、ジャケットやスーツスタイルにもマッチします。

ソックスで遊び心を

普段取り入れないような色柄にも挑戦しやすいアイテムがソックスです。服や靴がシンプルなときにアクセントとして使っても楽しくなります。フラットシューズに、トレンドのシアーな透け感ソックスを合わせるのも素敵です。

自分らしいおしゃれを最大限に楽しもう

最後に、伊野さんから読者の皆様へメッセージをいただきました。

「衣服を着ることは、本来体温調整や体の保護を目的とした行動でしたが、今の時代は、個性の表現や楽しみの要素が非常に大きくなりました。ファッションを楽しむことは、身につける人の気持ちを明るくし、笑顔や活力を与えてくれます。
私自身これまでの人生で、母の死や、自身の病気など辛い経験もたくさんしてきました。そんな時、大好きなファッションの楽しさに支えられてきました。だからこそ、身体への負担の少なさや機能性を重視する中でも、『好き』『着たい』という感情も大切にアイテムを選んでいただきたいと思っています。
全身でなく、小物など1点だけでも良いと思います。ファッションを楽しむことが、日々の辛さや悩みを乗り越えるためのちょっとした糧になってくれるでしょう。

誰しも、『素敵な自分でいたい』という気持ちは持っているものです。その気持ちを忘れずに、自分を大切にするひとつのツールとして、ぜひ日々のファッションを 楽しんでいただけたら嬉しいです。」

取り入れてみたいアイテムや着こなし方はありましたか?身体へのストレスが少ないアイテムの中から好きなものを選び、ぜひ自分らしいファッションを楽しんでみてください。

PROFILE

伊野 佳代子さん

パーソナルスタイリスト

看護師を志し、看護学生として学ぶ中で病気を患い退学。その後大手アパレル会社でキャリアを重ね、ジュエリーからバッグ、靴、服まで幅広い知識を体得。出産を経て仕事復帰後、フリーランスとしてパーソナルスタイリングを開始。イベントやオンライン講座なども定期的に開催し、セオリーどおりのファッションではなく、「その人らしさ」を尊重したスタイル提案で、多くの女性たちをサポートしている。